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企業の働き方改革と大学のキャリア教育

2017.08.23

新卒採用者の3年間離職率

大学卒業後に就職して3年以内に離職する割合は3割という話は、ご存知の方も多いでしょう。企業から「大学にキャリア教育」の強化を要請される理由の一つでもある訳ですが、この数字は、近年悪化が顕著になったものではなく、平成7年以降長期に亘って続いているのです。そして、退職理由の第一は「労働条件」第二は「人間関係」第三が「自分に合わない」です。私も大学のキャリアセンターで学生の就職支援をしている頃は、学生側の「社会適応能力・社会性」に課題があり、大学として取り組むべきことがあると考えて対策を検討し実施していましたが、今は少し考え方が変わって来ました。

まず、当時、学生に感じていた「課題となる点」ですが、これは、広く言えば「学生の社会性」です。学生は年々幼くなって来ているように思うのです。その原因として考えられるのが、学生(生徒)の生活環境です。極端に言えば、小・中・高と学校教育の堀の内側に閉じこもらせて、社会との接点が少なすぎるのです。教員の先生方も一般企業でのご経験がない方がほとんどで、先生を通しても社会性を大きく向上させることは難しいと思われます。何より社会性は、日頃の経験により醸成されるものです。私は、今年60歳になりましたが、中学生の頃に部活動でスポーツの大会に参加するなどという時は、友達と電車やバスを乗り継いで参加したように記憶しています。ところが、私の息子たちは、親が分担して車を用意して部員を送り迎えしていました。様々な学校での事故などが発生した過去の経緯から、保護者や学校が対応したのだとは思いますが、結果としては、社会経験を減らしていくことになっている思うのです。その一方で、学校のキャリア教育が強化されていきました。日常的に歩くことを減らしておいて、週末ジムに通う大人たちと似ているなと思います。社会教育は、日常的に、周囲の社会環境から刺激を受けて醸成されていくものだと思うのですが、その欠如部分を、学校教育が補おうとしているのです。そこには、自ずと限界があります。効果は甚だ乏しいものとなるでしょう。そして、この環境が、3年以内の離職率3割を招来させたと考えていました。

人材不足が促す「働き方改革」

ですが、今は、どうやらそれは間違いであったと考えています。学生に「社会性の欠如」の課題があることは間違いないと思うのですが、離職率3割は、長期的傾向であり、「社会性の欠如」との相関は低いように思われます。そして、むしろその原因は、低成長下における労働環境にあるのではないかと考えるようになりました。私が銀行に就職したのは1981年ですが、入行して数年は教育期間でした。まあ「給料泥棒」という働きぶりでした。その期間に「社会性」も含めて社会人基礎力が養成されていくというところでしょうか。仕事は厳しかったかも知れませんが、教育を受けていたのです。給料に見合う成果は上げていなかったと思います。しかし、2000年以降はどうだったでしょうか。新卒採用はポテンシャル採用と言われ、中途採用の即戦力採用と対比されていますが、新卒に即戦力能力が要求されてきたのではないでしょうか?新卒入社後、直ちに稼がされてきたのです。

人材不足の昨今は、「企業の働き方改革」が注目されています。企業もやっと重い腰を上げたということでしょうか。企業も慈善事業をしているわけではないでしょうから、人材確保に「働き方改革」が不可欠と考え始めた結果だと思われます。3年以内の離職率における退職理由の「労働条件」の順位は下がっていくかもしれません。それでも3割退職の数値がどの程度改善するかは予断を許さないでしょう。退職理由「自分にあわない」が増加する可能性は十分にあります。

企業の第二新卒に対する評価は上昇しています。新卒入社の際必要となる社会人としての基本教育が済んでいることや転職活動により自身の客観視や能力チェックが出来ていることが評価されています。これにより企業や人材会社によるスカウトが増加するかもしれません。企業には、更なる、他社に競争優位となる「働き方改革」が求められることでしょう。

大学のキャリア教育は質的改善がポイント

一方、大学側はどう取り組むべきでしょうか。私は、キャリア教育の専門科目を増やすところにはないと考えています。それよりは、本来のカリキュラムにキャリア教育的な視点を組み込んで学生の能力強化をしていくことが重要ではないかと思うのです。学生の研究テーマ取組において、社会との連結点を意識させるということです。教員の先生方は、今を生きているわけですから、これはできておられるのだと思います。但し、学生に理解させるように取り組まれているかどうかは分かりません。教授方法の工夫・改善が必要ではないでしょうか。基本的な能力の強化ということになると大学だけでは無理です。中・高教育からの取組が重要となります。「考える力」であるとか、「課題解決能力」であるとか、産官学共同で「求める人材像」を議論し、今まで以上に協力して取り組んでいく必要があると思います。企業も採用活動の一環としてのインターシップだけでなく、大学への講師派遣など、大学との交流を密にすべきだと思いますし大学側も積極的にそのような人材をスカウトしていくべきだと思います。大学は産業界との人材交流を通して高等教育機関としての社会的評価を一層高めるように取り組むべきではないでしょうか。

 

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